過度な手汗(手掌多汗症:しゅしょうたかんしょう)は腹立たしくて、決まりが悪くて、信頼関係を破壊しかねない問題です。業務文書が汗で破れたり、握手するとひどい反応を示されたり、汗まみれの手はあなたの社会生活、そして仕事や交友関係に悪い影響を与える可能性があります。
続発性多汗症であれば基礎疾患を治療すれば、結果的に手汗(手掌多汗症)の治療になります(詳しくは「手汗(手掌多汗症)の原因-原発性多汗症と続発性多汗症を解説」をご覧ください)。一方、原発性多汗症に関しては、なぜ起こるのか実際にはよくわかっていません。
ただ、原発性多汗症は遺伝である場合があります。原発性多汗症の多くの人々は、「子供のころから大量の手汗をかくことがあった」と医者に話します。
原発性多汗症の人々は、以下に挙げる 皮膚科で行える非外科的処置 で手汗を治療できます。
治療法 | わき | 手 | 足 | 顔(頭) |
制汗剤 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ボトックス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ミラドライ | 〇 | × | × | × |
レーザー | 〇 | × | × | × |
イオン導入 | × | 〇 | 〇 | × |
薬物 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ETS手術 | 〇 | 〇 | × | × |
手とわきに大量の発汗がある人々の最後の手段として「ETS手術(交感神経切除のための内視鏡手術)」があります。ETS手術では発汗に対して重要な役割を持つ胸の交感神経を切除します。ETS手術における一般的な副作用は、体(例えば胸、背中または足)の他の部分での過度な発汗です。つまり当初問題であった部分とは別の部分に影響が出るのです。
医学的治療を行う場合は、この副作用を考えなければなりません。だからまずは段階を踏んで、適切に多汗症治療を進めることを強く推奨します。
- 応急処置
- 日常生活における問題解決
- 医学的治療
1.応急処置
手を洗う
手汗は自然に乾燥することはありません。大量の手汗を綺麗にするために、普通の人よりも手をたくさん洗う必要があるでしょう。大量の手汗があなたを悩まし始めたら手を洗い、タオルや手ぬぐいでふき取って乾かすのです。
- 食器洗いやお風呂に入っている時以外は、石鹸よりも普通の水を使って洗うのが最適です。石鹸を使うと手の裏の皮膚が異常に乾燥してしまいます。
- 洗面所で手を洗うことができない時は、抗菌性でないアルコール消毒液を持ち運びましょう。アルコールは手汗を一時的に乾燥させる機能があります。
- 必要なときに手汗をふき取ることができるように、タオルまたは手ぬぐいを持ち運びましょう。あなたが誰かと握手する状況になる前に利用してください。
手を冷やす
大抵の人は体が少しでも熱くなると、手に汗をかきます。だから体を冷ますことは、迅速かつ効果的な処置になります。湿気を乾燥させ、汗の生成を遅くするために、扇風機かエアコンの前に手をかざしましょう。
- 自宅にいない時は、素早く手を冷やすために、洗面所で冷たい水を手に流してください。そしてタオルや手ぬぐいを使って完全に乾燥させてください。
- できるだけ体が熱くなる状況を避けること最優先事項です。ヒーター(暖房)は必要がない限り使わないで、室温を低くしてください。
粉(パウダー)を手に振りかける
自宅にいる時など、手が少し白く見えても問題ないならば、汗を吸収させるために手に粉(パウダー)を振りかけてください。汗まみれの手でダンベルのような重いものを持ったり、縄跳びのようにしっかりと握る必要があるものを使わない限り、粉(パウダー)は何かと便利です。粉(パウダー)は以下のものをお試しください。
- ベビーパウダー(香りがしてもしなくてもよい)
- 重曹または片栗粉、コーンスターチ
2.日常生活における問題解決
よりたくさん汗をかく原因となるアイテムを使わない
空気をこもらせる製品は自然乾燥する機会を失わせ、あなたの手を湿っぽくさせるでしょう。だから手を覆うような衣類を着けないでください。可能ならば以下のアイテムは避けてください。
- 手を多い尽くす手袋。もちろん外が氷点下になっている時は着けてください。しかし屋内または必要がない時は手袋の使用を避けてください。あなたが手汗を隠したいならば手袋は効果的です。しかし手袋をつけることで、より大量の手汗をかくでしょう。。
- 石油系ローションとその他のスキンケア製品。「ワセリン」は乾燥肌の人々が湿気を密閉するために使用します。そしてそれは、汗まみれの肌と同じ影響を及ぼします。ワセリンは汗が乾くのを防ぎ、あなたの手がベタベタになる原因となります。ココナッツオイルや他の化粧用オイルも同じで、皮膚に水分を保つために使われます。
制汗剤を使う
あなたは手に制汗剤を使おうとは思ったことがないかもしれません。なぜなら制汗剤は普通、わきに使うからです。しかし、わきの発汗を抑える制汗剤は手にも同様の効果を与えます。
- アルミニウムを含有していて、香りがない制汗剤を選んでください。多くの人は効果を実感できます。
- 医者に処方してもらえる塩化アルミニウム六水和物(より強い制汗効果のある化学物質)を含有している制汗剤もあります。
もしあなたが医者に頼らず、まずは自力で手汗を改善したいというならば、手汗専用制汗剤を試してください。ドラッグストアなどで店頭販売されている「わきに使用することを目的とした制汗剤」と異なり、手汗のために開発された制汗剤です。手汗の原因となる汗腺(エクリン汗腺)に作用するので、最も効果を期待できます。
リラックスする
不安とストレスによって大量の手汗が引き起こされます。ストレスを減らし、汗腺が暴走するのを防ぐために、瞑想やヨガなどを実践しましょう。
- あなたが悩み事について考えている時に手が汗まみれになるならば、その悩み事の解決法を考え抜いて、その問題に真っ向から取り組んでください。もし助けが必要ならば、カウンセラーに相談することも考えましょう。悩み事を解決することが、発汗を防ぐことにつながります。
- 何かが不安で汗をかいているならば、座って目を閉じて、2~3の深呼吸をすれば素早く解決できるでしょう。まずは心を静めることが大事です。
3.医学的治療
イオン導入
イオン導入は、水に手を浸して皮膚の下に微弱な電流を送ります。そして一時的に発汗作用を防ぎます。
- 水に手を浸している間、水を通して微弱な電流が送られます。ヒリヒリする感覚を感じるかもしれませんが、痛くはありません。
- イオン導入キットは家で使用できます。イオン導入キットを購入したい旨を医者に話せば、いつでも利用できます。
内服薬(経口薬物)
抗コリン薬として知られる手汗治療のための内服薬(経口薬物)は発汗を止める効果があります。だから医者は手掌多汗症を治療するために、抗コリン薬を処方することがあります。
- あなたがアスリートでないならば、内服薬の使用は良い選択かもしれません。しかし、あなたが日ごろからアクティブな生活を送っているならば、体の発汗作用の邪魔をすることは危険です。この場合の汗は運動によって生じた熱を冷ますために機能するのです。
- 抗コリン薬の副作用として、口の乾燥やその他の症状を引き起こすことがあります。
ボトックス注射
ボトックス注射は一般的に顔のしわをなめらかにしたり、唇をふくらませるために使われますが、汗を流す神経を止めるためにも使われます。しかし、ボトックス注射は痛みを伴うし、発汗を一時的に止めるだけです。
ETS手術(交感神経切除のための内視鏡手術)
ETS手術により、胸にある体の発汗作用に信号を送る神経(交感神経)を永久に遮断することができます。
- この手術は最後の手段として考慮されなければなりません。なぜなら、手術をした多汗症患者の中には、体の異なる領域(手のひら以外)で過度な発汗が起こる副作用があるからです。あなたの手汗はなくなるかもしれません。しかし背中または他の領域で新たな過度な発汗が起こるかもしれません。
- あなたがこの治療法を受けたいのならば、交感神経切除の手術を行ったことがある経験豊富な医者を見つけてください。ETS手術の危険性をよく知らない医者には決して任せないでください。