手汗治療に用いるボトックス注射の効果・費用・痛み・副作用・保険

ボトックス注射

2004年、アメリカ食品医薬品局(Food & Drug Administration)は制汗剤では治療の効果が表れない患者に対し、 原発性多汗症(過度な発汗がある人)の治療のために「ボトックス(Botox)」の使用を承認 しました。ボトックスはカリフォルニアにあるアラガン(ボツリヌス毒素に関して世界で最も有名なブランド)という会社によって開発されました。

アメリカ食品医薬品局(Food & Drug Administration)とは、アメリ合衆国の政府機関です。医薬品をはじめ、食べ物や化粧品などを中心に国民の日常生活に触れるあらゆる製品の管理を行っています。

ボトックスは、アメリカで合計8つの病状を治療するために承認されており、アメリカ食品医薬品局によって最初に承認されたのは1989年のことでした。ボトックスは長年にわたって、痙縮(手足の筋肉のつっぱり)や運動障害を含む様々な病状に苦しむ何百万人もの患者のために使われてきました。そして 少なくとも20カ国において、過度の発汗、いわゆる多汗症の治療のためにボトックスの使用が承認 されています。

ボトックス治療の流れ

ボトックス注射は医者の診察室で行うことができて、ほとんど時間は必要ありません(経験豊かな医者であれば、10分かからずに両方のわき、または手に注射をすることができます)。また、 ボトックス注射をすることで、仕事や休日の活動に影響はありません (注射した当日の激しい運動やサウナだけ禁止です)。

ボトックス注射にはかなり細い針が用いられ、 過度な発汗がある部位に1~2cmおきに皮膚の下に少量のボトックスが注入 されます。注射の潜在的な不快感(痛み)を和らげるために、医者は麻酔を用いることもあります。

ボトックス注射を打った後は徐々に発汗が収まりますが、徐々に戻ります。手汗の原因を根本的に解決するもんではないからです。そのため、手汗を抑える効果を得るために引き続き注射を行う必要があります。こうした繰り返しの治療は7~16ヶ月の変化を見て、長期的に治療を行う場合があります。

ちなみに、わきにボトックス注射をする前に、腋毛はそらないほうがよいです。実際、多くの医者はボトックス注射の前に腋毛がはえていることを好みます。

ボトックスの効果

 ボトックスは体の汗腺を「オンにする」役割を果たす化学物質を妨げる能力を持つ天然生成されたタンパク質です。 ボトックスに含まれるボツリヌス毒素が注射された部位では、体内の化学的な伝達物質をブロックまたは妨げることで、 発汗を「オフにする」 ことができます。根本的な手汗の原因を取り除くわけではありませんが、結果的に手から汗をかかなくなります。

研究によると、わき、手、足、頭(顔)と他の比較的小さな体のエリアの過度の発汗はボトックスで安全かつ有効的な治療ができることがわかっています。手汗(手掌多汗症)の場合、ボトックスは80~90%の人に効果があります。脇の治療に用いられるときは発汗の82~87%を減少させることが判明しています。

治療効果は2~4日後にではじめ、 通常は2週間以内に十分な効果 があらわれます。ボトックスを使用することで4~12ヶ月は皮膚が乾燥しますが、研究の中には14ヶ月もの長い期間続いたという結果もあります。こうした研究結果の発表から、ボトックスを使用した度重なる治療は 手汗に対して安全かつ有効であり、多汗症患者の日常生活の質の向上にも大きな役割がある ことがわかりました。

ボトックス注射の痛みと副作用

ボトックスは注射なので、施術中は当然痛みが発生します。しかし大人であれば我慢できる程度の痛みなので安心してください。ただ、6ヶ月後に再度注射が必要なので、注射が苦手な人は覚悟を決めましょう。

そして手にボトックスを注射した場合、一時的に手に痛みがあったり、力が入りにくくなる副作用が発症する可能性があります。

ボトックス注射は頭(顔)にも使うことができます。しかし頭部への注射はテクニックが必要なので、経験豊かな医者を探さなければなりません。発汗のための治療として顔にボトックスを使用した場合、潜在的な副作用として「非対称」に汗がでることです(顔の片側からだけ汗がでる)。これはボトックスが顔の一部の筋肉に広まって結果起こりうることです。だから必要に応じて、その帳尻あわせのためにボトックスを追加で注射することがあります。

足の多汗症にもボトックスは使われます。しかし注射の痛みが他の部位よりも大きいのと、効果が薄いという調査結果があります。実際、足にボトックスを注射した多汗症患者の50%がその結果に不満を持っているというデータがあります。

ボトックス注射の費用と保険の適用

ボトックス治療は健康保険は適用されず、自費診療になります。治療が必要とされる体の部位の広さによって価格が異なります。施術する病院や使用する薬剤によって値段は変わりますが、1回あたり7~10万円はかかります。

ボトックス注射の費用

※写真は某病院における施術費用例です。

また前述の通りボトックスの効果は一定期間しか持続しないので、再度注射を行う必要があります。その場合、追加費用が発生します。病院によっては追加の治療がセットになって安く行えたり、年間通して複数回まで定額で行えたりするところもあります。

もし金銭的に懐がさみしい場合は、手汗治療のための制汗剤を使用するのが良いでしょう。皮膚科で処方される制汗剤であれば保険が適用されます。また、市販のものであれば手汗対策用ジェルクリーム『フレナーラ』がお手頃の価格で、ボトックスと同等の効果を期待できます。