楽器を弾いていると手汗がひどい人の対処法

楽器

私は楽器を弾くことはありませんが、ヴァイオリンを弾く友人の中にこう言う人がいました。

「一曲弾き終わったらさ、手のひらだけでなく、ヴァイオリンにも汗がびっしりついちゃうんだよね。」

いわゆる手汗です。ヴァイオリンに限らず、ギターやピアノ、キーボード、ベースなど様々な楽器においても、手汗がひどいとそれだけ楽器は汚れてしまいます。それに、演奏を終えた後に握手をするとき、相手の反応はどうでしょう?

「うわ、すごい汗」

なんて、ストレートに言う人は少ないですが、困惑した顔をしますよね。次から、あなたとの握手はないかもしれません。

どんな人でも、楽器を演奏したり、人前でプレゼンテーションをしたり、緊張すると手に汗をかくものです。このこと自体は異常なことではありません。しかし、一部の人は通常よりも多量の手汗をかきます。いわゆる「手掌多汗症」という症状です。

手掌多汗症とは

「手掌多汗症」の人は、ちょっとしたきっかけで、手から多量の汗をかきます。楽器の演奏のように、何かに集中する作業が代表的な例です。

私は楽器を弾きませんが、パソコンの操作やペンで書く作業を仕事としています。そのため、私がパソコンでの作業を終えた後のマウスや、文章を書き終えた後の手のひらは汗まみれです。特にマウスはこまめに掃除しないと、汗の汚れでひどいことになってしまいます。そして自分の手のひらはハンカチやティッシュでごしごしとふかなければなりません。

軽度な人であれば、その作業中に多量の汗をかくだけで済みますが、ひどい人の中には演奏が終わっても手汗が止まらなかったり、何もしていなくても手から多量の汗が流れ出たりする人がいます。それこそ「ソファでくつろいでいるときでさえ、手から汗が出る」というケースもあるくらいです。

楽器演奏者が手汗で悩むなら制汗剤が最適

基本的に手掌多汗症が自然に治るケースはほとんどありません。そのため手掌多汗症に苦しむ人は世界中にいます。

手掌多汗症の治療はいくつかのステップを踏んで行われます。初期治療ほど安価で簡単にできます。

まず、 最も多く行われているのが制汗剤 です。制汗剤は日本の夏場に男女問わず使用されている、ごく一般的な商品です。制汗剤というと「わき汗」に使用するイメージが強いですが、手汗にも有効です。制汗剤に含まれる成分が汗腺にふれると溶けて「蓋」になり、汗が出るのをストップしてくれます。

ただ日本の場合、店頭で購入できるほとんどの制汗剤は「わき汗」に使用することを想定されています。欧米では「手汗」用の制汗剤が店頭で購入できるのが一般的ですが、この点で日本は遅れています。

実は「わき汗」と「手汗」では、汗の種類が異なります。「わき汗」はアポクリン汗腺で作られて、特有の臭いを伴います。一方で「手汗」はエクリン汗腺で作られて、臭いは出ません。汗腺の種類や汗の成分が異なるため、「わき汗」用の制汗剤では「手汗」に効果が薄いのです。

現時点で「手汗」用の制汗剤は皮膚科で診察を受けて処方箋をだしてもらうか、市販製品では手汗対策用ジェルクリーム『フレナーラ』があります。『フレナーラ』は今のところネット販売しか行われていませんが、メディアには何度か取り上げられておりそこそこ名前が知られています。

 制汗剤は副作用もなく、比較的安価だし、一時的に手汗を止めたい場合に効果的 です。大抵の人は制汗剤で十分な効果を得ることができます。しかし、中には制汗剤でも手汗を止められない人がいます。その場合は、皮膚科での治療が必要になります。

皮膚科ではボトックス注射イオン導入が行われます。ボトックス注射は多少の痛みを伴う治療なのと、何度も注射しないといけないのであまりお勧めはできません。イオン導入は、微量の電気を水に流して、患部に通電させます。手だけでなく足などにも使用でき、自宅でも治療できます。ボトックス注射やイオン導入は大きな副作用はないので、手掌多汗症の治療として広く行われています。

以上に挙げた治療法でも効果が出ない場合、手汗治療のための薬物を処方されることもあります。ただし、経口薬は汗が必要な時も汗を止めてしまうので、汗が本来の役目を果たせずに体が過熱してしまう危険性があります。そして、最終手段としてETS手術があります。これは汗を出す神経を切ってしまうのですが、手以外の場所での発汗が異常なほど増える副作用がでる可能性があります。これらの治療を行う場合、専門的な知識を持っていて経験豊富な皮膚科医を探さなければなりません。

すこし恐ろしい話をしましたが、大抵の手汗であれば制汗剤を使用すれば日常生活で困ることはないでしょう。手汗は根本的な治療が難しい症状です。だから 手汗とうまくつきあい、できるだけ汗が出ないように対処することが大事 です。