手汗治療のための薬物

薬

過度な発汗を抑制するための経口 ( 口から摂取する ) 処方薬がいくつかあります。薬物は様々な方法で全身に発汗制限を働きかけます。汗腺への刺激を防ぐことで、全身での発汗を減少させることができるのです。

錠剤を飲んで発汗を止める。

これは単純に聞こえます。しかし、実際はもっと複雑です。多汗症治療のための経口薬物は、顔や頭の多汗症や全身性多汗症、そしてその他の初期の手汗治療法 ( 例えば制汗剤、イオン導入、ボトックスまたはこれらの組み合わせ ) を行っても効果がなかった人々に最適です。

交感神経切除のための内視鏡手術(ETS手術;Endoscopic thoracic sympathectomy)による副作用や体の大きな部位 ( 背中など ) で発汗がある人、特別なイベント ( 例えば演奏やプレゼンテーション ) を行うために一時的に発汗を抑えたい人、あるいは他の薬物または病状に誘因される発汗がある人は、この経口薬物で成功を収めるかもしれません。

抗コリン薬

多汗症治療に使用される最も一般的な薬物は抗コリン薬です。抗コリン薬は、グルコピロール塩酸、オキシブチニン、ベンズトロピン、プロパンテリンなど、いくつかの種類があります。

多くの医師と多汗症患者は抗コリン薬を使用して多汗症治療に成功しています。しかし、抗コリン薬は特に「多汗症のための臨床実験」が行われたわけではありません。 アメリカのFDA(Food & Drug Administration) が認可したのは、ほかの病状における研究に基づいています。つまり、抗コリン薬が多汗症に使用されること自体は「FDA未認可」であるというわけです。

もちろん、薬物が「FDA未認可」で使用されることはよくあります。そして、こうした薬物の適用外使用が相当安全であるという歴史的事実は、多くの医師たちに確信をもたらしています。いくつかの抗コリン薬 (例えばグリコピロール塩酸やオキシブチニン)は子供に使用しても安全ということさえわかりました。

抗コリン薬の危険性

しかし、注意しなければならないことがあります。より新しい研究 (2015年発表)によると、65歳以上が長期間にわたって高水準の抗コリン薬を使用すると痴呆症が進行する可能性が指摘されました。65歳以上(もしくはそれに近い年齢)の患者は、多汗症を治療するために抗コリン薬を使用する前に、しっかりと医師と協議する必要があるでしょう。

また、この年代の人々には、一般的に、抗コリン薬は中枢神経系(または脳や脊髄)に影響を与えません。その代わり、化学伝達物質であるアセチルコリンをブロックするように周囲に働きかけ、発汗を誘発する可能性がある汗腺の上にある受容器官に作用します。しかし、同じような受容器官はからだの複数の場所にあるので、抗コリン薬治療による様々な副作用(例えば口が渇いたり、便秘、味覚障害、かすみ目、心臓の動悸など)が発生する可能性があります。

抗コリン薬を使用する時の注意点

これらの副作用は、服用する薬物の量を個別に調節することによって抑えることができます。インターナショナル多汗症協会の創設者であり、多汗症治療の専門家でもあるデイビット医学博士は、抗コリン薬治療の副作用を「予想できて、対処可能で、普通は穏やかである」と特徴付けました。

多汗症患者の中には、「抗コリン薬を使うときは用心する必要がある」と言い人がいます。上述したように、65歳以上の患者は抗コリン薬の使用法と潜在的な副作用の可能性について医師と協議したがっているかもしれませんが、一方でより注意しなければならない患者もいます。抗コリン薬は全身に作用し、特定の体の部位だけを対象とすることができないので、多汗症患者は問題がない場所での発汗も減らすことになるからです。

こうした全身での発汗を減少させることは、体が過熱する危険性をはらんでいます。インターナショナル多汗症協会の理事長であるグレーザー博士は、毎年何百人もの多汗症患者を治療して、抗コリン薬の使用について熟知しています。グレーザー博士は「抗コリン薬を使用するとき、体の発汗作用が「オフ」になることで、体を冷却することがより困難になる」と警告します。そのため、アスリートや野外で仕事をする人や、体が過熱することで病気になりやすい人々は抗コリン薬を使用した治療には特に気をつけなければなりません。薬物治療を行う患者または子どもの親は、体温の変化と水分補給に気をつけ、体の過熱をあらわす症状(例えば、青白い肌、めまい、筋肉のけいれん、頭痛と吐き気など)に気づかなければなりません。

抗コリン薬を子供に処方する場合

最も多く処方されている抗コリン薬の2つは液状の薬物として使用されます。そしてこれは多汗症に苦しむ子どもにとって重要なことです。具体的には、FDAは小児脳性まひ患者で錠剤を飲み込むことができない子どもたちに対して、抗コリン作用性グリコピロール塩酸の液体状態をでの使用を認可しました。オキシブチニンは液体の製剤でも利用でき、膀胱(尿)に病気をかかえている小児患者に使用することが認可されています。

「どんなに砕かれて、押しつぶされた錠剤であっても、飲み込むことができなかった8歳の子どもがいました。素晴らしい解決方法が、ここにあります。そして、この治療が子どものために認可されているので、あらゆる年齢の患者にも安心感を与えます。」

プロプラノロールとベンゾジアゼピン

特別なタイプの多汗症患者の治療に効果がある経口薬があります。プロプラノロールとベンゾジアゼピンです。これらは中枢神経系に作用して、体の「不安」といった感情を抑える作用を持ちます。就職の面接やプレゼンテーションによって過度の発汗を起こす患者に最適です。副作用として、長期的な使用ができないことが挙げられます。例えば、ベンゾジアゼピンは常習性があり、多くの患者は薬によって引き起こされる鎮静効果に耐性がありません。

他にも様々な経口薬に反応した多汗症患者のケースもあります。クロニジン、インドメタシン、ガバペンチンのような薬剤は特別なタイプの多汗症に効果があることが判明しています。抗コリン薬にはもう一つ、有効的な使用法があります。砕いた抗コリン薬をイオン導入に使用する水に入れることで、手と足の多汗症に大きな効果があるのです。

あなたは医者に自分の多汗症について話をしましたか?もししていないならば、今こそその時です。医者とともに何ができるのか、正しい治療法を知り、多汗症治療にどのような組み合わせがあるのか、もっと勉強しましょう。

あなたが多汗症を治療するために経口薬を考えているならば、この分野の専門家は最初に手汗用制汗剤イオン導入またはボトックス注射を勧めることを知っていてください。これらの処置の有効性についてより多く学ぶために、このサイトの関連ページを呼んでください。