ファンデーションの歴史は美の歴史

ファンデーションの歴史

メイクの必須アイテム・ファンデーションは、白粉(おしろい)をもとにしてつくられました。今では考えられないようなものを材料にした時期もありましたが、それでも多くの人が使い続けたそうです。

ファンデーションの歴史は、美へのあくなき探究の歴史でもあります。あまり知られることのない、ファンデーションの生い立ちについて触れてみたいと思います。

白肌への憧れから生まれたファンデ

ルーツは毒性の高い「鉛(なまり)」

ファンデーションの起源は古代ローマ時代、ギリシャ人に使われたのが始まりとされています。「肌が白いことは特権階級の象徴」とされていたため、王族や神官はこぞって鉛白(えんぱく)を塗っていました。鉛白とは鉛(なまり)が原料となっており、主に血管系に作用する強い毒性があります。皮膚からの吸収により、動脈硬化や神経麻痺といった中毒を起こす人が続出しました。

しかし当時の女性たちは、有害であることを知りながらも使い続けたのでした。ちなみに鉛白はシミもできやすくするので、これを誤魔化すための「つけぼくろ」がトレンドにもなったそうです。

ペストとともに黒肌が流行

白肌信仰が廃れたのは、ペストが大流行した17世紀です。感染から身を守るために家にこもった女性たちは、不健康そうな白い肌を誤魔化すために、暗い色のファンデーションを塗りました。

しかしペストが落ち着くと白粉の人気が再燃し、19世紀末頃まで危険な白粉は使われます。1899年になってようやく、人体に害のない酸化亜鉛が代替品として用いられるようになりました。

それから15年後の1914年、現在の原型ともいえるケーキタイプ(パウダーファンデ)をマックスファクターが開発したのです。もともとは映画撮影用につくられたものですが、多くの女優から絶賛されたのをきっかけに世界中に広まりました。特に1937年に登場したパンケーキ(濡らしたスポンジで塗布するファンデ)は、映画「風と共に去りぬ」の撮影で使われたことで有名です。

日本におけるファンデのあゆみ

文明開化でカラフルに

白粉が出てくる最も古い文献は日本書紀です。大陸より献上された白粉を、女帝である持統天皇がとても喜んだという記述があります。このとき入ってきたものも鉛白で、鉛白粉の名前で親しまれていました。

16世紀には安価で質のいい鉛白粉がつくられ、江戸時代では庶民も鉛白粉でお化粧するのが一般的になりました。明治時代になってようやく鉛中毒が社会問題となり、酸化亜鉛を主原料にした無鉛白粉が開発されたのでした。明治末期になると、白粉は「色おしろい」へと変化していきます。着物から洋服へとシフトチェンジしていったこの時代、黄色や肉色(肌色)といった色おしろいは女性のニーズをガッチリ掴みました。

女性の活躍とファンデーションの進化

日本初の油性ファンデ―ションは、1947年に誕生した「ピカソファンデ―ション」です。当時はクリームの上に白粉を重ねるメイク方法が主流でした。その手間が省けるクリームファンデーションの存在は、さぞかしセンセーショナルだったでしょう。

1950年にはパウダーとスティックも販売され、オークル系が追加されるなど色展開も豊富になりました。ちょうどこの時代は、女性の社会進出が進みはじめた時期でもあります。日常的なメイクが当たり前になるとともに、ファンデーションも飛躍的に進化していったのです。

中身も仕上がりも「ナチュラル」に

1960年代になるとベージュ系の色味が登場します。濃淡で立体的に見せるメイクが流行し、小麦肌がトレンドになるとダークカラーに人気が集中します。

しかし70年代に入り、紫外線による肌へのダメージが認識されはじめると、今度は打って変わって「すっぴん風」の自然体メイクに転向します。バブル全盛期の80年代は、外資系ブランドが続々とパウダーファンデを売り出し、マットな質感に仕上げるメイクが主流でした。90年代では透明感や素肌感に注目が集まり、光を利用したパール入りのファンデーションがトレンドになります。防腐剤フリーや無香料といった商品も、この頃から出始めました。

2000年以降はアンチエイジングや美白など、美容効果をプラスしたものが急増します。ミネラルファンデやBBクリームなども登場するようになり、最近ではとくに使用感の心地良さが重視されています。

ファンデの進化は現在進行形

「もっと美しくなりたい」という想いが、ファンデーションを進化させてきました。カバー力や崩れなさ、成分、仕上がりなど、現在手に入るものはどれも機能性が高く、昔と比べて種類も豊富です。長い時間をかけて、成功を失敗を繰り返してきたからこそ今があります。そしてこれからも、時代のニーズに応えるべくファンデーションは進化し続けるでしょう。

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