ポールは最初、インターナショナル多汗症協会の会員の人たちとさえ、自分の話をするのは嫌でした。「私は毎日大量の汗とむきあっていますが…」ポールは言います。「多汗症が私にどのような苦しみを与えているのか、言葉では十分な表現ができないと感じるのです。しかし、私のような人間が情報を提供していかなければ、医学界は決して多汗症の症状を理解できないでしょう。」
「大量の発汗は決して慣れるということはありません。それは満足させることができない、欲求不満のようなものです。私は医者や家族にさえ話をしたことがありません。自分自身が多汗症でない限りは、本当の意味での理解はできないし、話すことも難しいでしょう。」
ポールは手のひら、わき、足とこし、顔で大量の発汗がありました。特に彼を悩ましたのは、汗まみれの手のひらとわきです。「中学生の時から今まで、多汗症は私の人生に大きな影響を与えました」。そうポールは言います。「私と握手をした後のリアクションを見たり、発言を聞いたりすることはとても屈辱的でした。
特に私が高校や大学でデートをするとき、多汗症はとても大きな障害でした。デートをしていれば誰だって神経過敏になります。私はもう汗がだらだら流れました。もし自分の手が汗で水浸しになっている時に、誰かの手を握ってみてください。相手はとても決まりが悪いですよ。過度に汗をかかなければ私だって自信を持ってデートができたでしょう。
幸いにも、私は多汗症を気にしない人とめぐり合えました」。実際、ポールは妊娠中の奥さんがいます。しかし夫であり、まもなく父になるポールは、音楽家でもあります。「私がギターを演奏しているとき、ひどい手汗がいらいらします。演奏が終われば握手もしたいのに、汗まみれの手を広げるのはとてもじゃないけどできません」。
ポールは多汗症を抑えるために、処方箋のいらない手汗用制汗剤を使用しています。「制汗剤はわきに確かに効果があります」と、ポールは言います。「私はかつて2着のシャツとスーツを着て汗を隠していました。でも今は、ときどき湿気を感じるぐらいです」。
しかし、ポールの問題がなくなったわけではありません。彼の使う制汗剤は手のひらには効果がありませんでした。「多汗症に詳しい皮膚科医を調べて相談しました。また多汗症に悩んでいる人たちと体験談を話し合てから、以前よりは気持ちが楽になったと思います。多汗症を理解しない医者や他人と話しても、それは苦痛だけです。」