オルニチンサイクル(尿素回路)とは

オルニチンサイクル

オルニチンサイクル(Ornithine cycle)とは尿素回路(Urea cycle)とも言い、タンパク質を代謝する際に生成される有毒物(アンモニア)を無毒性尿素に変換する一連の反応です。

オルニチンサイクルは肝臓で機能している

アンモニアは私たちの体内から取り除くべき有毒な生成物です。オルニチンサイクルは過剰なアンモニアを肝臓細胞のミトコンドリアの中で尿素に変換します。形成された尿素は血液に入り、腎臓によって濾過され、最終的には尿(おしっこ)として排出されます。この過程でオルニチンは再生して同じ働きを繰り返すので、「サイクル」「回路」という言葉がつきます。

オルニチンサイクルの意義

オルニチンサイクルの主な目的は体内の有毒なアンモニアを排除することです。健康な成人であれば、体内から約10~20gのアンモニアが毎日除去されます。機能不全状態のオルニチンサイクルは体内で過剰にアンモニアが蓄積することにつながります。アンモニアは血液を介して脳に到達し、高アンモニア血症及び関連疾患につながる可能性があります。

高アンモニア血症の例として嘔吐、哺乳力低下、多呼吸、痙攣、意識障害、行動異常、発達障害などがあります。

オルニチンサイクルの障害

オルニチンサイクルの障害は先天的な物であり、肝臓は尿素の循環に必要な酵素の1つを作ることができません。新生児であればおう吐や昏睡、痙攣を引き起こす可能性があります。この症状はよく敗血症として誤診され、無駄に抗生物質による治療が施されます。たった1mmのアンモニアでさえ過剰になり、重度の不可逆的損傷を引き起こす可能性があります。

一見健康に見える成人でもオルニチンサイクルがうまくいっていない場合があります。アンモニアを取り除くのに時間がかかるため、軽度の障害(疲れが取れにくい、めまいになりやすいなど)があらわれます。先天性の代謝異常の場合は根本的な治療はないので、生涯にわたって軽度の症状をもって暮らすことになります。その大半は認識されていないか、無視されることが多いです。

疲れが取れにくくなった場合はオルニチン不足

前述の通り、オルニチンサイクルの機能そのものに障害を持って生まれた場合は、先天性の物であり根本的な治療はありません。ただし投薬等によりコントロールすることは可能なので、適切な医師による診断を受けてください

一方で、 「最近になって疲れが取れにくくなった」というような場合は、オルニチン不足により毒素の分解が間に合っていない可能性 があります。その原因の例としてはストレス、飲酒、過剰な運動やダイエットなどが挙げられます。このケースであればオルニチンが含まれる食べ物やオルニチンサプリメントで補給すれば改善の可能性が高いです。

日本人は昔からしじみの味噌汁を飲む習慣がありました。それはしじみに豊富に含まれるオルニチンの存在を体で知っていたのでしょう。昔ながらの習慣というのは、意外と裏付けがあるから面白いですよね。